大学生の体験記シリーズについて
大学生が書いたレポートを紹介します。
大学で教育心理学の非常勤講師をしていた頃、講義を受けていた学生に、子どものときに実際に体験したことを書いてもらっていました。
ルールは一つ。
すべて実話であること。
もちろん、他の人から見たら違って見えたかもしれないようなことでもいい。
あなたが見た、あなたにとっての心の現実を言葉にすること。
毎週、600人を超える学生のレポートが集まりました。
私は一週間かけてそれらのレポートを読みました。
そして、それらの貴重な体験記の中から選んだ数点を、次の講義で紹介し、教育や心理について考える時間を設けていました。
プライベートな内容に触れるため、「いつかどこかで発表する」ことに同意してもらったもののみ紹介することにしていました。
発表してほしくないレポートには「マル秘マーク」をつけてもらう約束事があったのですが、ある日、「必ず(講義で)読んでください」と添え書きされた「マル必マーク」のレポートが出現しました。
そのレポートは、小学生のときの恋に関するものでした。
リクエストに応えて次の講義で発表したところ、あまりにもいい話だったので、読み終えると、「ヒュー!」という褒めたたえる喝采の指笛、笑いとため息のまざったどよめき、そして拍手がわきおこりました。
ある一人の体験、ある一人の心の現実は、その人一人だけのものにとどまらず、他の人にも共感できるところがありました。
「似たような体験を思い出した」という感想がたくさん寄せられました。
多くの学生から、「本になったら教えください」と声をかけてもらっていたのですが、機会のないまま今に至ります。
遠くに離れた学生にもいつかどこかで届くよう、ここに書いておきます。